粉末金属

粉末冶金部品の金属組織試料作製

金属組織学分析用の粉末治金部品の試料を作製する際の主な課題は、研磨と琢磨後に真の多孔性を明らかにすることです。 分析用粉末治金部品の試料作製方法を学び、迅速かつ再現性のある結果を出してください。

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粉末治金部品の主な特性

粉末治金は、小型で複雑な形状を持つ均質構造の部品を大量に生産することを可能にするため、特に自動車業界において比較的一般的に使用される部品生産方法です。 粉末治金では、金属(および時として非金属)の粉末の混合が圧縮され、焼結されます。 製造工程は高価ですが、最終部品は鍛造または鋳造部品に対して具体的な利点があります。

粉末治金は以下の項目を実現します。
  • 簡単に合金できない金属を合金化する
  • 様々な特性を持つ多岐多様な合金を生産する
  • きめの細かい均質な構造を作る
  • 複雑な形状を形成する
  • 優れた仕上がりの部品を創造する

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図1: 実験的な粉末治金ステンレス鋼、カラーエッチング

粉末治金の一般的なアプリケーションには以下が含まれます。

  • 連接棒、鎖歯車およびカムなどの機械・構造部品
  • 溶解および鋳造では生産が困難な耐熱金属
  • 特定の目的に使用する制御された気孔を持つ多孔材料
  • 銅/タングステンなどの合金を形成しない複合材料
  • ニッケル基やコバルト基超合金などの高負荷特殊合金鋼(ジェットエンジン部品に使用される)
  • 等方性を備える高速度工具鋼および炭化物の均一分布

粉末治金部品の金属組織学

圧縮され、焼結された構成部品の密度は、強度、延性、硬さに影響を及ぼします。 このため、粉末治金部品の金属組織学には通常、特定の気孔検査が含まれます。

工程管理では、粉末治金部品の金属組織学は、気孔率、非金属介在物、交差汚染を検査するために使用されます。 また粉末治金部品の金属組織学は、新製品や製造工程の改善開発に重要な役割を果たします。

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図2: 0.5%C、Ni, Cu およびMoの拡散合金化を含有する粉末治金鋼 ピクラールエッチング、フェライト、マルテンサイト、ベイナイトおよびNiリッチオーステナイトが微細なパーライトを取り囲んでいる。

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図3: 0.8%Cの粉末治金鋼、1.5%Mo.のプレアロイ、 ナイタールエッチング、緻密なベイナイトが見られる。

粉末治金部品の生産

鉄、銅、鋼紛を含む多数の異なる金属が粉末治金構成部品の生産に使用されています。

鉄粉と合金紛製造工程

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粉末製造
粉末製造には、化学的方法とアトマイズ法という2つの一般的な方法があります。
  • 化学的方法: 鉱石酸化物を融点以下の温度にて直接金属に変換し、金属粉末を得る方法です。
  • アトマイズ法: 合金の溶融金属をノズルから流し、高圧水もしくは気体流を直接吹き付けます。 微細な液体が形成され、それが粒子になります。
生産された金属粉末は混合されます。 この段階では、ルーブリカント、炭素及び/または合金元素などの他の元素が追加されます。

超硬金型内で圧縮される粉末
構成部品を生産するために、混合された粉末は、 超硬金型内で高圧で圧縮成形されます。 この段階では、部品は最終製品のような形状になりますが、必要な強度はありません。 これらの構成部品は「グリーン」部品として知られています。

構成部品の焼結
構成部品は必要な機械特性および物理特性を得るために、保護雰囲気の中で高圧で焼結されます。 隣接する粒子間の拡散を通して接着が起こります。

最終処理
用途によっては、部品の幾つかは高温静水圧プレス、含油、表面硬化、メッキなどの追加処理が行われます。

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図4: スポンジ鉄粉、SEM

粉末治金部品の試料作製時の課題

金属組織学分析用粉末治金部品の試料を作製する際の主な課題は、研磨と琢磨後に真の多孔性を明らかにすることです。 これは軟質材料や軟質と硬質材料が混合している材料では特に困難です。
  • 軟質金属では研磨中、摩耗した金属が気孔に押し入れられます。
  • 硬質および軟質材料が混合された部分の試料は、著しい浮彫を見せることがあります。
  • グリーン部品: 圧縮後に焼結されていない構成部品は、非常に脆弱なため、特別な注意が必要です。

粉末治金部品の試料作製時の課題の克服

このページの後半部は、この課題を克服する方法が説明されています。 この手順は、実際のラボアプリケーションで成功し、再現性のある結果を生むことが証明されています。

より詳しい手順の説明はここに記載されています。完全なアプリケーションノートをダウンロード

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図5: 8分間のダイヤモンド琢磨後の図1の試料の一部(3 μm)


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図6: 4分間のダイヤモンド琢磨後の粉末治金鋼試料の気孔(3 μm)

粉末治金部品切断の推奨

粉末治金部品は、鉄、銅、鋼紛を含む様々な材料で作られます。 適切な切断ホイールの選択は、材料の種類によります。
  • 単一材料の粉末治金構成部品を切断するには、材料に適した切断ホイールをお選びください。
  • 混合材料の構成部品を切断するには、主要な材料に適した切断ホイールをお選びください。
  • 焼結カーバイトには、樹脂接着ダイヤモンド切断ホイールをご使用ください。

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図7: 村上試薬でエッチングされた焼結タングステンカーバイド(WC/Co)、1500x

粉末治金部品の埋込みの推奨

埋込樹脂と試料材料との間の良好な接着を確保するには、埋込みの前にアセトンまたはトルエンで試料を徹底的に脱脂します。

切断と同様に、最高の埋込み方法は、取扱い中の材料によります。
  • 焼結部品 (埋込み試料)には以下を使用できます:
    -熱間圧縮埋込の場合、フェノール樹脂 (マルチファスト) またはより硬い充填剤入りの樹脂 (デュロファスト もしくは レボファスト)。
    -冷間埋込には、 充填剤入りのアクリル樹脂(デュロシット-3 またはレボシット)。
  • グリーン部品は切断した後、冷間埋込エポキシ樹脂 (カルドフィックス-2エポフィックスまたはスペシフィックス-40)で再度真空状態で含浸を行う必要があります。
  • 粉末の場合、少量の粉末を硬化速度の遅いエポキシ樹脂で混ぜることで埋込むことができます。 混合物は直接、埋込みカップに注ぐことができます。
  • 硬質金属粉末の場合、細粒化した埋込み樹脂(デュロファスト)を混ぜることで、熱間圧縮埋込みを実施することができます。 混合物を埋込みプレスに注入し、フェノール樹脂をその上に注ぎます。

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図8: 従来の製法で製造された鋼における炭化物分布

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図9: 従来の製法で製造された鋼における炭化物分布

詳細をご覧ください
  • 弊社の 切断  と 埋込み ページで知識、専門性、知見を取得してください
  • 弊社の各種切断装置 と消耗品をご覧ください。
  • 弊社の各種埋込み装置と消耗品をご覧ください。 

粉末治金部品の研磨および琢磨の推奨

基本的な原則として、粉末金属を研磨、精研磨、および琢磨する場合、同じ材料のインゴット鋳造試料と同じ手順を使用するべきです。 c

面出し研磨
  • 150HV以上の大量の試料材料の面出し研磨は、ダイヤモンド研磨砥石 (MD-ピアノ)を使用します。 ステンレス鋼材 は、酸化アルミニウム研磨作業面(MD-アルト)上で面出し研磨をすることができます。
  • 150HV以下の材料は炭化ケイ素のフォイル/研磨紙で面出し研磨を行うことができます。
精研磨
  • HV150以上の材料の精研磨には、MD-アレグロのダイヤモンドを使用します。
  • MD-ラルゴのダイヤモンドは、150HV以下の材料の精研磨に適しています。 
ダイヤモンド琢磨
金属組織研磨中、金属は気孔に押し入れられます。 次の研磨工程が適切に行われない場合、(特に軟性材料で)金属の残留物の「覆い」が孔の上に残ります。 これが除去されないと、これらの覆いが評価を妨げます。

このため、ダイヤモンド琢磨の後に、精研磨を行う必要があります。 ダイヤモンド研磨工程は、材料の真の気孔を明らかにするまで十分に実施することが重要です(図10-13を参照)。

粉末治金青銅の試料作製

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表1: P/M青銅の6個の試料の作製条件、直径30mm埋込済み、半自動機 テグラミン、直径300 mm円板仕様

ダイヤプロ の代替として、多結晶タイプのダイヤモンド懸濁液P、9 µm、3 µm および 1 µmと赤色/緑色/青色のルーブリカントを併用できます。

粉末治金鋼の試料作製方法

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表2: P/M鋼の6個の試料に対する作製条件、直径30mm埋込済み、半自動機テグラミン、直径300 mm円板仕様

ダイヤプロの代替として、多結晶タイプのダイヤモンド懸濁液P、9 µm、3 µm および 1 µmと緑色/青色のルーブリカントを併用できます。
*代替として、MD-Dac/ダイヤプロ Dac3を使用できます。

焼結カーバイト用の試料作製方法

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表3: 焼結カーバイドの6個の試料に対する作製条件: 直径30mm埋込済み、半自動機テグラミン、直径300 mm円板仕様。

ダイヤプロの代替として、多結晶タイプのダイヤモンド懸濁液P、9 µmおよび 3 µmと緑色/青色のルーブリカントを併用できます。
*オプション作業工程。

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図10: MD-アレグロ で精研磨後の 粉末治金鋼表面

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図11: 図10と同じ試料、不十分な琢磨、粉末治金鋼の表面が見られる


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図12: 図11と同じ試料、十分な琢磨で正しい気孔が見られる。


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図13: 図11 作業面の高倍像、気孔を覆っている金属がまだ残っている。

粉末冶金部品の洗浄および乾燥

研磨後、水/洗剤混合液を用いて粉末治金試料を洗浄し、気孔から懸濁液や潤滑液を取り除きます。 その後イソプロパノールで徹底的に洗浄する前に、試料を水で洗います。

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図14: 洗浄後の水シミ、組織判断を誤らせる原因。

こちらで詳細をご覧ください。

粉末治金部品のエッチングの推奨

粉末治金試料を分析する際、この気孔率と比較するために理論密度を知っていることが重要です。

密度、気孔形状、気孔サイズ、酸化物や介在物、焼結ネック、遊離黒鉛(図15および図16参照)を観察するには、エッチング前の試料観察をお勧めします。 その後、試料はシミの乾燥を避けるために、直ちにエッチングすべきです。

粉末治金試料の推奨エッチング手順。
  • イソプロパノールで表面を濡らし、試料を表向きにしてエッチング液に浸し、少々揺り動かします。
  • 適切なエッチング時間の経過後、エッチング液から試料を取り出し、エッチング液に応じてイソプロパノールまたは水で洗浄します。
  • 温風を当てて乾燥します。

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図15: 粉末治金青銅、エッチングなし、グラファイト(灰色)とα-δ共析 (青色)を含有する、500x

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図16: 図15と同じ、塩化鉄(III)でエッチング、 青銅の粒界が見られる 500x

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図17: 十分エッチングされなかった試料-諸相の区別が困難になります

エッチング液

関連金属と合金には一般的な化学エッチング液を使用できます。 化学薬品を取り扱う場合、標準の安全対策を行う必要があります。

銅粉金属および銅粉合金用エッチング液
水 100 ml
塩酸 20 ml
塩化鉄(III) 5 g
10-20秒エッチング
水で洗浄後、イソプロパノール洗浄
水100 ml
過硫酸アンモニウム10 g (新鮮なもののみ使用)
水で洗浄後、イソプロパノール洗浄
鋼粉金属のエッチング液
1-3% ナイタール 鉄-炭素系合金、鉄‐炭素-銅系合金およびプレアロイ鉄-モリブデン:
100 ml エタノール
1-3 ml 硝酸
炭素含有量により10-60秒エッチング、その後イソプロパノール洗浄
ステンレス鋼粉金属のエッチング液
ヴィレラ試薬:
グリセリン 45 ml
硝酸 15 ml
塩酸 30 ml
30秒から5分間エッチング
水で完全に洗浄後、 イソプロパノール洗浄
炭化タングステン粉末金属のエッチング液
村上試薬:
水100 ml
水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム 10 g
フェリシアン化カリウム 10 g
浸漬エッチングまたはスワブエッチング
水で完全に洗浄後、 イソプロパノール洗浄

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図18: オーバーエッチング

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図19: 正しいエッチング

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まとめ

通常合金化が難しい金属でも、粉末冶金法を使用することで構成部品を作ることができます。 一般的な材料に鉄、銅、鋼紛があります。

粉末治金の構成部品の密度は、その強度、延性、硬さに影響されます。 このため、気孔の制御は金属学的品質管理にとって重要な部分です。

金属組織学研磨中、金属は気孔に押し入れられ、金属の残留物が「覆い」になり、評価を妨げます。 このため、注意深いダイヤモンド研磨および琢磨は、金属構造の真の姿を確保するために非常に重要です。

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図20: 銅溶浸粉末治金鋼

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ホルガー・シュナール

全画像提供:デンマークのアプリケーションスペシャリスト、ブリジッテ・ニールセン。粉末治金部品の金属組織学試料作製に関する特定の情報を確認するには、弊社のアプリケーションスペシャリストにお問い合わせください。